レタッチ

特集「レタッチしすぎの罠」

 アサヒカメラ2019年9月号の特集記事「レタッチしすぎの罠」を遅ればせながら大変興味深く読ませてもらった。アサヒカメラ誌は言うまでもなくカメラ・写真系の出版物の中でも最も有名な雑誌で、そこはプロ・アマ問わず大変ハイレベルな写真作品でなければ掲載されないだろう。そんな権威ある雑誌が個人が自由に参加できるインスタグラム、俗に「インスタ映え」と言われる特に派手な色彩の写真に対して批判的な記事を書いている。

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カメラレビュー第7回 NIKKOR-N 1:1.1 f=5cm + Z 7(1)


 「大口径レンズに於ては文献などに表されているような普通の収差曲線のみを見て、その善し悪しは軽々に判定出来ない」

 1956年写真工業6月号の誌面上、当時新しく発表したニッコール5cmF1.1レンズの解説でこのレンズの設計した村上三郎はこう述べている。続けて

 「優秀な収差曲線を得て、設計値がまとまり、さて制作した結果は予想に反してまずいレンズが出来ることがよくあるものである。従って鏡径比の小さいレンズとは全く異なり、結像のさまたげとなると予想される収差の要素は見逃すことなくむしろ探し求めて、驚くべき計算力を惜しみなくかけねばならぬことになり、まことに大仕事であった」

と結ぶ。

 NIKKOR-N 5cm F1.1。ニッコールの名のつく35mm用カメラレンズの中で、一番明るいレンズとして半世紀以上経た今も輝き続ける大口径レンズだ。ニコンが現在開発中のZマウントF0.95レンズが出ればその座を明け渡すことになるが、その前にこのレンズをニコンのミラーレス機で使ってみることにする。

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