Yashica Penta J + Tomioka Tominon C. 1:2 f=5cm / FUJICOLOR C200 (Cropping)
TOMINON
富岡光学製のレンズを評するときにしばしば言われる「トミオカの写り」というものがあるが、具体的にどういうものなのか私は分からないでいた。それは富岡光学が多くのメーカー向けに様々なタイプのレンズを製造していたということもはっきりしない原因のひとつであろう。ヤシカのカメラに注目するにあたって、いくつかのTOMIOKA銘のレンズと富岡がOEMで製造されたとされるものを試写し、このいささか神格化された感のあるメーカーのレンズを批評するにはまだまだ使い込みが足りないのだが、現時点で私が言えるのは「トミオカの写り」を本当に味わいたいのであればTOMIOKA、あるいはTOMINON銘のレンズを買っておけ、と言うことだ。
富岡光学製のレンズでその評価を決定付けた記事にアサヒカメラ1958年9月号のニューフェース診断室でのヤシカ35の評価であろう。例によってボディに関しては少々辛辣な評であったのに対し、レンズのヤシノン45mmF2.8に関しては驚くべき解像力として高い評価を与えている。そして付け加えて以下の文が綴られている。
このレンズ、ならびにクセノター型ではないが姉妹品のヤシノン45ミリF1.9はいずれも富岡光学の製品で、本名はトミノンというのだが、八洲光学へはヤシノンの名で納入されている。さらに同社製の他のレンズも理研光学へはリケノン、ビューティー・カメラへはカンターと、それぞれ名を変えて納められている。これはレンズ・メーカーとしていかにも見識のない話で、富岡光学もこれほど優秀なレンズを作り得るからには、本名のまま(もっともトミノンという名は少々泥くさいが)レンズをカメラ・メーカーに提供し、ツァイスや日本光学その他の大メーカーのように、自社製のレンズを取り付けることをカメラの看板と心得させるところまで、自信と権威を持つべきではないだろうか。もっともその反面、性能を問題にせず、単にF数だけでレンズを評価するアメリカ的カメラ・メーカーや、これに踊らされている使用者の態度も、大いに反省されなければならないとは思うが。
ーー1958年アサヒカメラ9月号 第23回ニューフェース診断室 P.155-156
この評価の中のアメリカ的カメラメーカーがいったいどこを指しているのかが非常に気になるところではあるが、自分の能力に自信があるのならば、もっと己を主張せいという、小穴純氏だろうか、木村伊兵衛氏だろうか、この痛快な叱咤は、現代に生きる我々の心にも響く、記憶に残る評価である。
いくつか富岡光学製のレンズで撮った作例を載せておく。
Yashica Penta J + Tomioka Tominon C. 1:2 f=5cm / FUJICOLOR C200
Yashica Penta J + Tomioka Tominon C. 1:2 f=5cm / KODAK 400TMax
Yashica J3 + AUTO YASHINON 1:2 f=5cm / KODAK GOLD200
Yashica PENTAMATIC + AUTO YASHINON 1:1.8 f=5.5cm (No.59120883-9ApertureBlades) / FUJICOLOR C200
Yashica PENTAMATIC + AUTO YASHINON 1:1.8 f=5.5cm (No.59120883-9ApertureBlades) / KODAK GOLD200
Yashica PENTAMATIC + YASHICA-TOMINON SUPER YASHINON-R 1:2.8 f=3.5cm / FUJICOLOR C200
Yashica PENTAMATIC + YASHICA-TOMINON SUPER YASHINON-R 1:2.8 f=3.5cm / KODAK 400TMax
Yashica PENTAMATIC + YASHICA-TOMINON SUPER YASHINON-R 1:2.8 f=3.5cm / KODAK 400TMax
出典・参考文献