仮象化の世の中で

メディウムの更新

 現在の美術教育の現場がどのようなものになっているのかは分からないが、私が学生の頃に習ったことは、まず最初に作品を描く土台である基底材(あるいは支持体ともいう)を自分で組み立てることから始まった。角材や板を切ってパネルを組み、布、あるいは和紙を貼り、下地を塗る。ここで注意しないといけないのは、使用する絵の具の性質によって適切なメディウムを選択しないと、せっかく描いたものが剥落したり退色したりするのだ。素材の選択の影響で剥落してしまった最も有名な例はレオナルド・ダ・ヴィンチが漆喰の上にテンペラで描いた最後の晩餐であろう。

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浮世の絵


成田屋三舛 六代目市川團十郎の荒川太郎武貞
東洲斎写楽(生没年不詳)筆 江戸時代・寛政6年(1794)間判 錦絵

浮世の絵

 今でこそ浮世絵版画は博物館や美術館に収められているが、それは江戸期に発展した、版元、絵師、彫師、刷師等の連携による出版システムで制作されたものであった。

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神馬図とウッドペインティング


「Minimal Art 1992」彦坂尚嘉, MISA SHIN GALLERY

彦坂尚嘉「PWP: Practice by Wood Painting」

 彦坂尚嘉氏の未公開作品の個展「PWP: Practice by Wood Painting」[1] が開催されていたので観に出かけた。以下は私の勝手な解釈なのでご参考程度に読んでいただきたい。

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