カメラレビュー第5回 PEN EE(Junk)



PEN EE

PEN EE

 「とに角、ボタンを押せばいいんですーー! シャッタースピードとか絞りとか、ピントなんてまるで昔がたり、そんなわずらわしさはみんなさようなら!」

 1961年、この衝撃的なキャッチコピーで誕生したPEN EEシリーズは、発売以降約20年ものロングセラーとなる銘カメラである。大衆の心をいかに掴むかは現在でもカメラメーカーを悩ませる問題だが、オリンパスPENシリーズは「カメラはプロが使うもの」から「いつでもどこでも誰でも写真を楽しむもの」と多くの人々の考えを変えてしまった最初のカメラであろう。

 かつて大ヒットしたこのカメラも、今では中古カメラ店のジャンクコーナーの常連になっている(当然整備された美品は1万円前後)。私が入手したPEN EEも中野の有名な中古カメラ店のジャンク箱の底に転がっていたもの。露出が正常に動作しないがレンズは綺麗だったのでジャンクにしては比較的高価(2500円)であった。

 店を出てすぐ、このジャンクPENにPANF50を詰め込んで撮り始めることにした。

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カメラレビュー第4回 Neoca S + ZUNOW 1:1.8 f=4.5cm



Neoca S + ZUNOW 1:1.8 f=4.5cm + PROVIA100F

伝説のレンズメーカー

 撮ったフイルムをスキャナーに取り込む前に、トリミングやコントラストの調節等のため、あらかじめプレビュースキャン(低解像度のスキャニング)をするのだが、粗い画像のプレビューにもかかわらず、非常にシャープな写りとしっかりした色乗りに思わず「こりゃ凄い」と声を出してしまった。帝国光学のZunowというレンズは、それが生産されていた当時から半世紀以上経た現代に至るまで、多くの写真家、批評家、カメラマニア達から一目置かれているのではないだろうか。それは1953年、世界で初めてF1.1の明るさのレンズを生み出し、その個性的な造りと解放の独特な描写、それを考えた天才的な技術者、そしてわずか数年の製造期間で倒産してしまったことなど数々の要因が重なり、レンズそのものが伝説的な存在になってしまっている。それゆえ、現存するズノーレンズは中古価格において非常に高額な取引がされており、なかなか入手し辛い状況である。

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カメラレビュー第3回 Neoca 35 Ⅱ S



Neoca35 2S + NEOKOR Anastigmat C 1:3.5 F=45mm

その描写は実に絵画的


同時代の他のレンズシャッターカメラと比べスッキリと
した直線的なデザインで格好いい

 新宿カメラBOXにて購入。たしか一万円ぐらいだったろうか。ジャンクのコーナーには置いていなかったが、距離計が怪しい(時々動かない)のとシャッターに若干の粘りがある。レンズは綺麗であった。購入時はネオカに関して全く予備知識もなく、他の無骨なカメラとは違い、線が細くスッキリとしたデザインが気に入って衝動買いしてしまった。

 試写したところ、案の定ピントの甘い写りを量産したのだが、焦点があっていない部分の描写が妙に魅力的というか、目の粗い筆で描き殴った描写をする。現代の綺麗な写りのカメラに慣れていると、ちょっとこういうのは好みではないと思われる方もいるかもしれないが、私には新鮮に感じた。

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