カメラレビュー第6回 Minoltina-S



Minoltina-S(silver, black)

Minoltina-S

 1964年発売。程度の良い大きさのボディと、写りの優秀なRokkor40mmF1.8のレンズを持つ。直線的で落ち着いたデザインは現代的で、後のMinolta CLEを彷彿とさせる洗練された佇まいだ。ただ時代背景を見ると、1961年から発売され大ヒットとなったシャッター速度優先AE搭載のキヤノネットに比べ、マニュアル露出のカメラは厳しい競争を強いられたようで売れ行きはあまり良くなかったらしい。しかし半世紀の時を超えた今、当時の自動露出カメラの機能が劣化したものが多いのに対し、マニュアルカメラはきちんと整備してあげれば当時と変わらない仕事をしてくれる。このミノルチナSも現在では中古カメラの相場は比較的価格が高めだ。

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カメラレビュー第5回 PEN EE(Junk)



PEN EE

PEN EE

 「とに角、ボタンを押せばいいんですーー! シャッタースピードとか絞りとか、ピントなんてまるで昔がたり、そんなわずらわしさはみんなさようなら!」

 1961年、この衝撃的なキャッチコピーで誕生したPEN EEシリーズは、発売以降約20年ものロングセラーとなる銘カメラである。大衆の心をいかに掴むかは現在でもカメラメーカーを悩ませる問題だが、オリンパスPENシリーズは「カメラはプロが使うもの」から「いつでもどこでも誰でも写真を楽しむもの」と多くの人々の考えを変えてしまった最初のカメラであろう。

 かつて大ヒットしたこのカメラも、今では中古カメラ店のジャンクコーナーの常連になっている(当然整備された美品は1万円前後)。私が入手したPEN EEも中野の有名な中古カメラ店のジャンク箱の底に転がっていたもの。露出が正常に動作しないがレンズは綺麗だったのでジャンクにしては比較的高価(2500円)であった。

 店を出てすぐ、このジャンクPENにPANF50を詰め込んで撮り始めることにした。

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カメラレビュー第4回 Neoca S + ZUNOW 1:1.8 f=4.5cm



Neoca S + ZUNOW 1:1.8 f=4.5cm + PROVIA100F

伝説のレンズメーカー

 撮ったフイルムをスキャナーに取り込む前に、トリミングやコントラストの調節等のため、あらかじめプレビュースキャン(低解像度のスキャニング)をするのだが、粗い画像のプレビューにもかかわらず、非常にシャープな写りとしっかりした色乗りに思わず「こりゃ凄い」と声を出してしまった。帝国光学のZunowというレンズは、それが生産されていた当時から半世紀以上経た現代に至るまで、多くの写真家、批評家、カメラマニア達から一目置かれているのではないだろうか。それは1953年、世界で初めてF1.1の明るさのレンズを生み出し、その個性的な造りと解放の独特な描写、それを考えた天才的な技術者、そしてわずか数年の製造期間で倒産してしまったことなど数々の要因が重なり、レンズそのものが伝説的な存在になってしまっている。それゆえ、現存するズノーレンズは中古価格において非常に高額な取引がされており、なかなか入手し辛い状況である。

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