「アート」(1)


カレーの市民 1884-88年 ブロンズ , オーギュスト・ロダン , 国立西洋美術館, 東京
The Burghers of Calais 1884-88 (model), 1953 (cast) (bronze) , Auguste Rodin , The National Museum of Western Art, Tokyo
(Nikon D7000 + Ai AF Nikkor 35mm f/2D)

「アート」

 自らの身分を言い表すとき、俗に〇〇系男子や〇〇系女子などと言われている。最近であれば〇〇系ユーチューバーという言葉(もはや少々野暮ったいが)が使われている。こうした記号で、私自身を表そうとしたとき、「社畜系会社員」といういささか自嘲気味な言葉が頭に浮かんだが、今後景気が悪化し続ければ、社畜でさえも居られなくなり、畜舎から摘み出される可能性もある中、思えば1992年から「失われた何十年」とほぼ同じ期間を社会人として過ごし、随分と難儀な時に社会に出てしまったなと思うこともあるが、私よりも若い世代は就職氷河期などさらに厳しい期間を過ごしており、長く働くことができただけ感謝しないといけないと、実家への帰省をやめて、長くなったお盆休みの間、しみじみと考えていたわけである。

 さて、話は変わるが、ここ最近の傾向として「アートはよくわからん。教えろ」と各方面から言われる事が多くなってきている。私自身、こう見えても美術系の大学を卒業しており、こうした問いには真摯に応えないといけないのではあるが、私は現在のところ画家でも芸術家でも写真家でも評論家でもないただの社畜系の身分なので、この問いに対しては、日本においてカタカナで「アート」と書かれている書籍なり雑誌なりイベントは怪しいものが多いから近付かないほうがいいですよ、と優しくアドバイスしてきたのだが、あまりいい加減なことばかり言っているとそろそろ怒られそうなので、私自身の経験を語りつつ、少し書き残しておく。

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