見慣れないレンズ
とあるカメラ修理屋さんのご主人と談笑していたところ、「そこにあるダンボールのもの持って行っていいいよ。もらい物だし、邪魔になるから」と言われ、箱の中を見るとスクリューマウントだろうか望遠レンズや引き伸ばしレンズ、古いパトローネなどジャンクな物がたくさん入っている。使わなくなって処分に困った方がカメラボディやレンズを修理屋さんに持ち込んでくることがよくあるらしい。中にはくもり玉だがタナーの13.5cmF3.5があり、「うわぁありがとうございます」と言いつつも、でも自分の部屋もジャンクなカメラやレンズで溢れかえっており置き場所に困るだけかもと思いながら、それでもホクホクしながら持ち帰ったのである。
帰宅して紙袋に入れたジャンクなレンズを一つ一つ詳しく見ていくと一本だけ見慣れない黒いレンズがあった。たしかダンボールの蓋の重しにしていて、私に渡す時に無造作に袋に放り込んでいたよなと思い出す。冒頭の写真がそれなのだが、いただいた当初は絞りの部分にはガムテープが貼られ、長細いフードもきつく装着されており、いったい何のレンズかよくわからない。普段よく通う都内のある中古店で店員の方に聞いても「昔のプロジェクター用のレンズか何かじゃない?」と素っ気ない。「あっ、でも昔のペンF用に改造してあるね」と言う。プロジェクター用のレンズというものがどういうものなのか自分にはよく分からなかったが、早速ペンFTに装着してしばらく撮り歩いていた。しかし、ハーフ判ゆえなかなか撮り終わらない。そのうち他のカメラに興味が移っていき、放置したまま気にも留めなくなっていた。思い出したときに少しづつ撮って、半年ぐらいでようやく撮り終えて、上がってきたフィルムをスキャナーで取り込んで見たところ、その映りに度肝を抜かれた。
解像感、ボケ、そしてなんとも言えない絶妙な色味。たとえピントを外しても柔らかい表現で一枚の絵にしてしまう描写力、画力。どうみても只者のレンズではない。
いったいこれは・・・、ベットリと付着したガムテープを丁寧に剥がし、きつく装着された長いフードもなんとか外してみたところ、
・・・・・・。
これを重しにしていたのか・・・。返せと言われると困るので、プロジェクター用のレンズということにしておきますか(笑)。