Neoca35 2S + NEOKOR Anastigmat C 1:3.5 F=45mm
その描写は実に絵画的
新宿カメラBOXにて購入。たしか一万円ぐらいだったろうか。ジャンクのコーナーには置いていなかったが、距離計が怪しい(時々動かない)のとシャッターに若干の粘りがある。レンズは綺麗であった。購入時はネオカに関して全く予備知識もなく、他の無骨なカメラとは違い、線が細くスッキリとしたデザインが気に入って衝動買いしてしまった。
試写したところ、案の定ピントの甘い写りを量産したのだが、焦点があっていない部分の描写が妙に魅力的というか、目の粗い筆で描き殴った描写をする。現代の綺麗な写りのカメラに慣れていると、ちょっとこういうのは好みではないと思われる方もいるかもしれないが、私には新鮮に感じた。
Neoca35 2S + NEOKOR Anastigmat C 1:3.5 F=45mm + Kodak ProImage100
Neoca35 2S + NEOKOR Anastigmat C 1:3.5 F=45mm + ILFORD DELTA100
すっかり気に入ってしまったので、東京カメラサービスに修理に出す。
ネオカ
ネオカに関して、ネットでの情報は驚くほど少ない。かつて70〜80年代に数多く発刊されていたカメラレビュー誌にもあまり取り上げられていないように感じる。写真工業1955年10月号で北野邦雄氏がネオカ2Sの前の型であるネオカ35(1S)をレビューしている。
実に軽くて小さい。これがネオカの身上であろう。レンズ部分を別に考えると、距離計連動の三十五ミリカメラでありながら、昔懐かしいヴェス単とかパーレットと殆ど同じような感じである。<中略> それからこのカメラのスタイルも仲々よろしい。どのカメラの真似もせず、オリジナルな一つのスタイルを作っているばかりではなく、黒と白の配分に考慮が払われているので、配色だけで一つの芸術品となっている。
ーー 1955年 写真工業十月号(光画荘)239頁 新しいカメラ 北野邦雄
ネオカ35(1S)は巻き上げはノブ式でシャッターはレンズのレバーを自分でチャージしなければならない。それをレバー式の巻き上げ(2回巻き上げ)にし、セルフコッキング(自動的にシャッターチャージ)式に改良したものがネオカ35 2Sである。両機は外見は若干異なるが、ほぼ同じデザインだ。私が中古カメラ店の多数の無骨なカメラの中からネオカに目が向いたのも、北野氏が指摘するように、他にはないオリジナリティのある優れたデザインをこのネオカが持っていたからであろう。この魅力的なカメラを生み出したメーカーは半世紀以上前に無くなってしまったが、優れたデザインはずっと生き続けるのだ。
ネオカ35 ⅡS
修理が完了し、改めてネオカ35 ⅡSを眺めてみる。手に持った感じは北野氏も言っておられるように非常に軽い(あくまで同世代の機種と比べてだが)。1Sではノブ式であった巻き上げも、レバー式となり楽になった。2回巻き上げてシャッターチャージが完了となるのだが、回転角が大きく、いささか豪快な巻き上げ方になる。その時レンズに付属のレーバーが動くのだが、ジーガチャン、ジーガチャンと動作する様子は、まるで銃砲に砲弾を装填しているようで楽しい。購入時は曇って見づらかったファインダーも驚くほどクリアになり、距離計も合わせやすい。レンジファインダーカメラの中では珍しく50cmくらいまで被写体に寄ることができるので便利だ。が、ファインダーに視差の枠が無いので、近接撮影時は注意が必要である。シャッタースピードは最高が1/300秒、絞りはF3.5〜F16まで。
中古カメラ店ではあまり見かけないが、ネットオークションでは、たまに出品されている。以下作例を示す。
Neoca35 2S + NEOKOR Anastigmat C 1:3.5 F=45mm + KodakGold200
Neoca35 2S + NEOKOR Anastigmat C 1:3.5 F=45mm + KodakGold200
Neoca35 2S + NEOKOR Anastigmat C 1:3.5 F=45mm + KodakGold200
Neoca35 2S + NEOKOR Anastigmat C 1:3.5 F=45mm + KodakGold200
Neoca35 2S + NEOKOR Anastigmat C 1:3.5 F=45mm + KodakGold200
Neoca35 2S + NEOKOR Anastigmat C 1:3.5 F=45mm + Lomo800
Neoca35 2S + NEOKOR Anastigmat C 1:3.5 F=45mm + Kodak Pro Image100
Neoca35 2S + NEOKOR Anastigmat C 1:3.5 F=45mm + Lomo800
最後から2番目の女性のレリーフの画像は最短距離なのだが、視差に注意しながら撮っても頭の上部が切れてしまった。近接撮影時は要注意だが、距離計連動で50mmほど寄ることのできるレンジファインダーのカメラはあまりないので貴重である。レンズのNEOKOR Anastigmatは、アンバーが綺麗に出るコダック系のフィルムが合うように感じた。
参考にネオカ35(1S)の作例も掲載しておく。
Neoca35 1S + NEOKOR Anastigmat C 1:3.5 F=45mm + Kodak ColorPlus200
Neoca35 1S + NEOKOR Anastigmat C 1:3.5 F=45mm + Kodak ColorPlus200
Neoca35 1S + NEOKOR Anastigmat C 1:3.5 F=45mm + Kodak ColorPlus200
Neoca35 2Sは軽いボディと近接撮影が可能な、気負うことなく気軽に撮ることのできる大衆カメラだが、かつて同じネオカから強烈な描写能力を持ったレンズを搭載したモデルが存在した。次回はそのカメラを紹介する。
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