Leotax S + Simlar 1:3.5 f=5cm

コピーライカ

 現在カメラマニア以外でバルナック型ライカを所持している人はどれくらいいるのだろうか。かつてライカ一台で家一軒買える値段と言われていた時代ならまだしも、現在はデジカメ全盛の時を通り過ぎてスマートフォン全盛の時である。中古のバルナック型ライカも手頃な値段になったが、わざわざ面倒な撮り方をしないといけないし、しかも現像にもお金のかかるフィルムで撮る人は極めて少数派になってしまった。その中でも、戦後の一時期、日本のカメラメーカーがこぞって製造したライカを模したカメラを買ってみようと思う人は、カメラ全体の販売量に比べて本当にごくわずかだろう。

  コピー品と言うとどうしてもオリジナルよりも劣ったものというイメージが付いてしまい、保守的なライカユーザーにはこれらの国産ライカを敬遠する人もいるかもしれない。実際私自身すでにライカII型(DII)を所有しており、長らくコピーライカには特に興味を持っていなかった。古いカメラを修理する職人と話す機会がよくあるが、決まって(ニコン、キヤノンを除いた)バルナックコピー機はオリジナルライカの精度には遠く及ばないと口を揃える。ただ、戦前から1950年代の日本で勃興した新興カメラメーカーの中でも、ニッカとレオタックスは比較的にカメラの作りが良いとも聞く。



左からLeotaxFVとTopcor-s5cmF2、Nicca3-FとNikkor-H・C5cmF2

 そんな私がLeotax Sを手にした今、当時の国産レンズやボディに対する私の考え方がいかに間違っていたのかを痛感した。

レオタックスという会社

 古いカメラが好きな方やお年を召された方であれば、レオタックスカメラという名前は知っているかもしれないが、現在では存在しない会社なので、最近フィルムカメラに興味を持った方は初めて聞くカメラかもしれない。昭和14年に設立された当初は昭和光学精機という社名で、主にツァイスのセミイコンタを手本にしたスプリングカメラを製造していたが、同時期にバルナック型ライカをモデルにしたレオタックスという35ミリ判カメラも開発し、戦後、戦禍を免れた工場で本格的に製造されていった。昭和31年にカメラ名でもあるレオタックスカメラ社に社名を変更する。昭和34年、他の新興カメラメーカーとの過当競争、銀行からの資金調達の失敗などにより倒産した。

Leotax S

 今回のLeotax Sは1952年に発売された機種。これまでライカII型、III型のコピーからシンクロ接点を装備したモデルだ。この次の機種以降ダイキャストボディを採用して造りがしっかりしていくのだが、レオタックスSはいかにも厚い鉄板を叩いて、手作業で組み上げた感じが残り、実に魅力的な佇まいである。手に持った感じはずっしりと重く、巻き上げや巻き戻し、付属のSimlar5cmF3.5の沈胴レンズの出し入れなどは、バルナックライカ同様にスムーズに行うことができる。ただ、若干のガタつき、グラつきがあり、やはりライカに比べると精密さは欠ける。しかし、緻密なライカよりも機械感の強い操作感覚は、使っていて非常に心地よい。撮影後、Simlar5cmF3.5の優しい描写を見つつ、戦後日本を支えて来た世代の方々が使っていたと思うと、ずっと手に持っていたい気持ちになるのだ。

 

以下作例を示す。


Leotax S + Simlar 1:3.5 f=5cm + Fuji 100


Leotax S + Simlar 1:3.5 f=5cm + Fuji 100


Leotax S + Simlar 1:3.5 f=5cm + AGFAPHOTO VISTA Plus 200


Leotax S + Simlar 1:3.5 f=5cm + AGFAPHOTO VISTA Plus 200


Leotax S + Simlar 1:3.5 f=5cm + Fuji 100


Leotax S + Simlar 1:3.5 f=5cm + Fuji 100

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です