今年(2019年)の春に焦点工房からライカMマウント→ニコンZマウント変換ヘリコイド付きアダプター「SHOTEN LM-NZ MACRO(EX)」が発売された。このアダプターは通常のマウントから8mmほど繰り出すことによって、最短撮影距離が比較的長いライカMマウントレンズでも近接撮影が可能になる。前回と同様NIKKOR-N 1:1.1 f=5cmにAmedeoアダプターを経由してこの焦点工房ヘリコイド付きアダプターを早速試してみた。
SHOTEN LM-NZ MACRO(EX)
前回のヘリコイドのないSHOTEN LM-NZはニコンZが発売されてすぐにリリースされたアダプターであった。私は発売後すぐに購入し約10ヶ月間使用した。ガタつくことなく問題はなかったが、最近になってヘリコイド付きのアダプターがあることを知り、今回のSHOTEN LM-NZ MACROを購入した。触って見て最初の印象はマウント面に真鍮が使われており質感がさらに高くなっている。マウントに装着するための指標の赤丸やヘリコイドの滑り止め部分のデザインなどNIKKOR5cmF1.1を参考にしたのかと思うぐらい似ており、レンズを装着した様子はデザインに全く違和感がない。Zの単焦点レンズは起伏のないすっきりとしたデザインで少々味気ないが、昔のレンズによく見られるマウント近くの「くびれ」はやはりセクシーだ。ニコンのZマウントはマウント径が大きく、過去のMマウントレンズやFマウントで小型の単焦点では、カメラに装着した姿が先細りの形になり少々格好良く見えない。現状のZボディにはある程度ボリュームのあるレンズの方がバランス良く見える。ただ現在のZ50mmF1.8やZ35mmF1.8は単焦点にしては少し長い。もう少し短い単焦点Zレンズが欲しい。Z 7は発売後すぐに購入したが新しいZレンズの出番は少なく、焦点工房のアダプターが出て以降、ほとんどNIKKOR-N 1:1.1 f=5cm専用のカメラボディになってしまった。
NIKKOR-N 1:1.1 f=5cmで近接撮影
約30cmぐらいまで寄ることができるので近くのものを撮ってみる。手元に適当なモチーフがなくスーパーで買っておいた無花果を並べて絞りを変えつつ近接撮影をした。
撮っていて気づいたのだが、無花果の底の穴が空いている部分は結構グロテスクだ。なんだか未確認生物の口のように見えて気持ち悪いがご了承願いたい。まず開放〜F2まではフレアにより薄いベールが覆ったように霞がかり、光が当たった部分は強くにじむ。開放からシャープに写る最近のレンズとは違い、このような描写を嫌う人も多く作品に取り入れるのはリスクを伴う。しかし、被写体や撮影条件をうまく吟味し、F1.1〜1.2までの写りを使いこなすことが、このレンズの最大の醍醐味と言える。F2.8でピントの芯がはっきりしてきて、F4〜F11まで立体感のある描写だ。特筆すべきはF16、F22で無花果の細かい産毛のようなところまでしっかり解像する。NIKKOR-N 1:1.1 f=5cmは開放付近の描写に気が取られがちだが、絞った描写も面白い。岸田劉生のブリキ罐とりんごの絵や速水御舟の柘榴の作品のような静物を撮ってみたくなる。
作例

Nikon Z 7 / Nikkor-N 1.1 f=5cm 開放

Nikon Z 7 / Nikkor-N 1.1 f=5cm 開放
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